【読書】なぜ読解力が必要なのか 池上彰

 学校であっても職場であっても、生活する上でも、読むという力は常に必要とされる。例えば、学校であれば国語に限らず、数学の問題と解くのにも問題を読む力が必要である。そして、それはどの教科にも同じく言える。職場では、決められているマニュアルや規則、規定を読むことが必要であるし、生活する上では、保険や取扱説明書を読む時に必要とされる。社会で生きていく上で、どんな状況でも読む力は必要である。その読む力を鍛えることで、読む力がそのものも本質を見抜く力になる。その力を読解力と言い、その力を改めて感じ直し、鍛える方法をこの本によって考えることができた。

 

 この本は5つの章に分かれていて、それぞれ

1、読解力を伸ばすと生き方が変わる

2、情緒と論理のふたつを使いこなす

3、読解力にとって一番必要なもの

4、読解力はいつでもどこでも伸ばせる

5、楽しく読解力を上げるにはやっぱり読書

読解力の定義、種類、活用方法、トレーニング方法、結論の順で書かれている。

 

読解力とは、読む力を使って、物事の本質を見抜くことである。その読解力はこの社会で生きている以上、どんな環境でも必要である。必要なだけではなく、読解力を伸ばすことが物事の本質を見抜くことになり、より良く生きる力につながる。例えば、コロナウイルスが36度で死滅するというニュースを見たとしよう。読解力がない人、つまり知識だけがある人は、この話を聞くとああ良かった。安心だという感情を持つだろう。しかし、読解力がある人で教養のある人は、36度はそもそも人間の体温であるからして、そんなことはあり得ない、フェイクニュースだと考える。極端な例になってしまったが、ただ知識として持つかそのニュースの本質を汲み取りニュースを判断するのは、その人の読解力にかかっている。

読解力には2つのパターンがある。小説やフィクション小説などを読むのに利用する情緒的読解力と知識本などを読むのに利用する論理的読解力である。この力は両方を伸ばしていくのが良いだろう。論理的に考え行動するのが最も効率が良く、最善の生き方にも思えるが、人間は時として理論的な行動を取れないものである。人間に感情があると同様に、社会自体にも人間と同じような感情に似た性質を持つ。一人一人の考えが交錯するこの社会では、両方の力が必要となる。

読解力を使って本質が見えるようになることで、自分の答えを自分の考えに従って出すことができるようになる。学校の国語の授業を思い出してほしい。作者の考えを答えよという問題が多く出てきたことであろう。それは作者の考えを正しく読むという能力として確かに大切だが、社会でよく使う能力としては作者の考えを感じ、さらに自分はどう考え、どう行動するかが大切になっていく。先の話にあった通り、知識人から教養のある人になっていくことで情報過多の時代を惑わされることなく、生きていくことができる。

読解力を伸ばすには、書く力を伸ばすのも良い。書くためには話の展開の順番を考え、抽象的表現から具体的な例を用いて、言葉に起こすことが必要になる。意外と書く側になると、言葉に詰まり、言いたい表現や言い回しがうまく出てこないものだ。何度も言うがそれは書き始めなければ、自分にどのくらいの力があるかわからない。

以上を踏まえた上で、もう一度本を手に取り、読む力から読解力に変わるのを感じてほしい。簡単な本ももちろん読んでいいし、時には小難しい、何度も読まなければ分からない本も読んで、自分の読解力をあげていこう。テストや試験に捉われることなく、教科書を読み、歴史を読み、本を楽しめるのは大人の特権であるのだから。